定期的メンテナンス・予防歯科
定期的メンテナンス・予防歯科を語る上で欠かせない論文があるので紹介したいと思います。
The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality,caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance. J Clin Periodontol. 2004 Sep;31(9):749-57. P.Axelsson B.Nystrom J.Lindhe
この論文は歯周治療の権威であるAxelsson Nystrom Lindheらが500人以上の人を対象にテストグループとコントロールグループに分けて3年、6年、15年、30年ごとにお口の中をチェックしてデータを取って、定期健診(メンテナンス)の重要性の科学的根拠を示したものです。
この論文から分かる事は、若いころから定期的に歯のメンテナンスを行っている人ほど、また治療後もメンテナンスを受けている方ほど歯を失っていないと言う事です。
現代の日本の歯科治療は、痛いから、腫れたから歯科医院に行き、歯を削ったり、歯ぐきを切ったり、抜いたり、お薬を飲んだりと、後追い型の歯科治療が当たり前となっている現状があります。
私は日ごろの診療の中で患者さんに「歯科の病気の特徴は一方通行である事が多い」とよくお話しします。病気(歯周病、カリエス)になってしまった歯は極初期の症状でない限り自然には治癒しないために、時には削らないと、時には抜かないとなりません。しかも、病気になってしまった歯や歯周組織を治すために歯科医院を受診し、最新の医療を熟練の歯科医が行ったとしても完全に元の状態に戻すことは出来ません(詰め物や銀歯、時には入れ歯でしか歯の形を戻す事は出来ません)。しかも、一度治療が介入した歯は再度細菌感染する可能性がとても高いのです。であるならば病気にならないために普段からしっかりとした予防を行うことが一番歯を長持ちさせることができる方法なのではないでしょうか。 しかも、患者さんにとって一番痛くない、体への負担の少ない方法なのではないでしょうか。
ごきそ歯科医院ではこのような考えで定期的メンテナンス・予防を中心とした診療を展開しようと考えました。
人間の体から細菌を無くす事は出来ません。また、カリエス(虫歯)や歯周病と言った病気は目に見えない細菌が相手である以上、治療がうまくいったからと言って完全に細菌を除去出来るわけではありません。すなわち、完全に細菌を除去できないと分かっている以上、適切なコントロールを外れると、カリエス(虫歯)や歯周病のリスクは増加しますし、一度、治療した歯であるならば、再度細菌に感染するリスクも増加します。
私達はごきそ歯科に来て下さった患者さんに「いまのところ、私達歯科医師は虫歯も歯周病も完全には治せないんです。」そして「将来、虫歯や歯周病が完全にしかも簡単に治るようになる日が来るまでは、予防的なアプローチを行っていくことが大切だと考えています。」とお話しさせていただいています。
食べる事、しっかり自分の歯で噛む事がいつまでも元気で長生きする秘訣であることが分かってきています。カリエス(虫歯)や歯周病は未知の病ではありません。であるならば、しっかり病気の予防をし、いつまででも自分の歯で楽しく食事ができるお口の環境を作っていきたいですね!